MauticとClaudeを使って、マーケターがランディングページを大量生産する

MauticとClaudeを使って、マーケターがランディングページを大量生産する

はじめに

NeX-Rayという、マーケティングミックスモデリング(MMM)のSaaSプラットフォームを提供しています。MMMとは、広告やマーケティング施策の効果を定量的に測定し、最適な予算配分を導き出す分析手法です。

NeX-Ray マーケティングミックスモデリング
アカウント連携をするだけで、SNSや広告などの様々な媒体を一元管理することができます

BtoB SaaSビジネスを展開する中で、直面した大きな課題の一つが、ランディングページ(LP)の制作でした。

MMMというソリューションは、業界や企業規模、抱えている課題によって訴求ポイントが大きく異なります。例えば、小売業界では「店舗売上への貢献度分析」が重要ですが、メーカーでは「ブランド投資の最適化」が関心事です。また、マーケティング責任者とデータアナリストでは、求める情報の粒度も異なります。

こうした多様なニーズに応えるため、ターゲット別、業界別、課題別に最適化されたLPを用意する必要がありました。しかし、従来の制作フローでは、1本のLPに数日から1週間かかり、外注すれば1本あたり5〜10万円のコストが発生します。理想的には50〜100本のLPを用意したいところですが、現実的にはリソースとコストの制約から、数本しか作れないというジレンマを抱えていました。

そこで私たちが取り組んだのが、オープンソースのマーケティングオートメーションツール「Mautic」と、生成AI「Claude」を組み合わせた、効率的なランディングページ大量生産の仕組みです。

本記事では、弊社が実践している方法を具体的にご紹介します。同じような課題を抱えるBtoB SaaS企業の皆さまの参考になれば幸いです。

なぜLP大量生産が必要だったのか

BtoB SaaSマーケティングにおいて、LPの重要性は年々高まっています。特に弊社のようなニッチなソリューションでは、「誰に」「何を」伝えるかの精度が、コンバージョン率に直結します。

セグメント別アプローチの必要性

NeX-Rayのターゲットは多岐にわたります。

  • 業界別: 小売、EC、メーカー、金融、サービス業など
  • 役職別: CMO、マーケティングマネージャー、データアナリスト、経営企画など
  • 課題別: 広告効果測定、予算最適化、ROI改善、アトリビューション分析など
  • 企業規模別: スタートアップ、中堅企業、大企業

それぞれのセグメントに対して、刺さる言葉も、提示すべき事例も、重視する機能も異なります。汎用的な1枚のLPで全てをカバーしようとすると、結果的に誰にも刺さらないメッセージになってしまいます。

リード獲得効率の最大化

Google広告やLinkedIn広告を運用する際、広告クリエイティブとLPのメッセージが一致していることが、コンバージョン率向上の鍵となります。「広告費最適化」という訴求で広告を出しているのに、LPが汎用的な製品紹介では、離脱率が高くなってしまいます。

広告キャンペーンごとに専用のLPを用意することで、メッセージの一貫性を保ち、リード獲得効率を最大化できます。

A/Bテストの実施

マーケティングの改善には、継続的なA/Bテストが欠かせません。しかし、テスト用のバリエーションを作るだけでも工数がかかり、十分なテストができないという課題がありました。

LP制作を効率化できれば、より多くの仮説をテストし、PDCAサイクルを高速化できます。

こうした背景から、LPの大量生産体制の構築に取り組むことにしました。

Mauticとは

Mauticは、オープンソースのマーケティングオートメーションプラットフォームです。リード管理、メール配信、ランディングページ作成、セグメンテーション、スコアリングなど、マーケティングに必要な機能を一通り備えています。

Open Source Marketing Automation - Mautic
Mautic provides free and open source marketing automation software available to everyone. Free email marketing and lead management software.

オープンソースであるため、自社サーバーにインストールして使用でき、データの完全な管理権を持つことができます。高額と言われるマーケティングオートメーションの中でも、自社運用してしまえばかなり安価に運用することができます。

Claudeを活用したLP制作の効率化

Claudeは、Anthropic社が開発した高性能なAIアシスタントです。テキスト生成だけでなく、HTMLやCSSなどのコード生成も得意としており、ランディングページの制作を大幅に効率化できます。特に今回のLPの生成では最も充実した出力を出すため、Claudeにしました。

Claude Console
Build with the Claude API

実践:MauticとClaudeを使ったLP大量生産フロー

それでは、具体的な制作フローを見ていきましょう。

ステップ1:ペルソナとメッセージの設計

まず、Claudeにペルソナ情報と商品・サービスの詳細を伝えます。

【プロンプト例】
以下の情報をもとに、ランディングページのコピーとHTMLを作成してください。

商品:マーケティングミックスモデリング(MMM)SaaS「NeX-Ray」
ターゲット:小売業界のマーケティングマネージャー(年齢35-50歳)
課題:複数チャネルの広告効果が見えず、予算配分が最適化できていない
訴求ポイント:店舗売上への貢献度を可視化、ROI最大化、データドリブンな意思決定

Claudeは、このような情報から、ターゲットに刺さる見出し、ベネフィット説明、CTA文言などを含む完全なランディングページコードを生成してくれます。

ステップ2:複数バリエーションの生成

同じNeX-Rayというサービスでも、切り口を変えることで異なるターゲット層にアプローチできます。

【プロンプト例】
NeX-Rayについて、以下の3つのターゲット向けにそれぞれLPを作成してください。

1. EC事業者向け:オンライン広告のROAS改善を重視
2. メーカー向け:ブランド投資とパフォーマンス広告のバランス最適化
3. データアナリスト向け:高度な分析機能と統計モデルの透明性を訴求

それぞれ、見出しと訴求ポイントを変えてください。

このように指示することで、短時間で複数のバリエーションを作成できます。

ステップ3:MauticへのLP登録

Claudeが生成したHTMLコードを、Mauticのランディングページエディターに登録します。

  1. Mauticの管理画面で「ランディングページ」→「新規作成」を選択
  2. エディターで「コードモード」に切り替え
  3. Claudeが生成したHTMLコードを貼り付け
  4. プレビューで確認し、必要に応じて微調整
  5. 公開URLを設定して保存

画像
ランディングページ → コードモードを選択

画像
詳細設定で、Claudeで作成したHTMLを貼り付け

Mauticでは、各ランディングページにトラッキングコードが自動的に埋め込まれるため、訪問者の行動を自動的に記録できます。

ステップ4:フォームとの連携

Mauticのフォーム機能を使えば、リード情報の収集も簡単です。

  1. Mauticで「フォーム」を作成(名前、メールアドレス、会社名、興味のある分野など)
  2. フォームの埋め込みコードを取得
  3. Claudeに「このフォームコードをLPに統合してください」と依頼
  4. 統合されたHTMLをMauticに再登録

これで、LP経由で獲得したリードが自動的にMauticのデータベースに蓄積されます。

ステップ5:自動化キャンペーンの設定

Mauticの真価は、LP訪問後の自動フォローアップにあります。

  • LP訪問者に自動でメール配信
  • フォーム送信者を特定のセグメントに追加
  • スコアリングによる見込み度の自動判定
  • 高スコアリードを営業チームに自動通知

これらの設定により、LP制作後のフォローアップも自動化できます。
 
これでLPの量産体制が構築できました。

成果(想定含む)

従来の方法での想定

  • デザイナーとライターで1本あたり3-5日
  • 40本制作するには120-200営業日(約6-10ヶ月)
  • 外注費用:1本5-10万円 × 40本 = 200-400万円

Mautic + Claudeでの実績

  • 1本あたり1-2時間(微調整含む)
  • 40本制作に要下する時間:約50時間(実質2週間)
  • コスト:Mauticのサーバー代(月1万円程度)とClaudeの利用料のみ

この効率化により、より細かいセグメンテーションが可能になり、広告キャンペーンごとに専用LPを用意できるようになりました。またこれらの作業は若手マーケターでも行うことができます。

まとめ

MauticとClaudeを組み合わせることで、従来は時間とコストがかかっていたランディングページ制作を、驚くほど効率化できます。大量のLPを短期間で制作できることで、より細かいセグメンテーションやA/Bテストが可能になり、マーケティングROIの向上が期待できます。

まずは小規模なテストから始めて、自社に最適なワークフローを確立していくことをお勧めします。

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